マンションの構造を把握しておく
マンションリノベーションを検討する際に、 リノベーションしたいマンションの基本構造を把握しておくことが重要です。 なぜなら、構造によっては、リノベーションする内容に制約が生まれるからです。
ラーメン構造と壁式構造
マンションの構造は、主にラーメン構造と壁式構造とに分かれます。
ラーメン構造
ラーメン構造は、垂直方向に建つ「柱」と柱をつないで水平方向にかけられる「梁」で長方形を構成します。建物を支える太い柱や梁が室内に出っ張ることがデメリットですが、コンクリートの構造壁はないためリノベーションの際には壁を取り払ったり、位置を変えたりする大掛かりな間取り変更が可能です。
壁式構造
壁式構造は、壁自体で建物を支えています。室内には撤去できない壁が残るために、自由自在な間取り変更というわけにはいきません。5 階以下の低層マンションの場合には壁式構造が採用されている可能性があります。
二重床と直床の違い
二重床
二重床はコンクリートスラブに支持ボルトをたてた上に、フローリングなどの仕上げ材を張っている二重構造の床工法です。コンクリートスラブと仕上げ材の間に空間があるため、床下に給排水管やガス管などを通すことができます。床下に空間があることで、給排水管設備を移動させやすく、リノベーションも比較的行いやすいことが多いです。 例えばキッチンや浴室といった水回り設備の位置を変えたいといった要望にも応えやすくなるでしょう。
二重床のメリット
・リノベーションしやすい
・配管設備のメンテナンスがしやすい
・衝撃音が伝わりにくい
二重床のデメリット
・天井が低くなりがち
・遮音性の高さが完璧ではない
・工事費用が高くなりがち
直床
直床はコンクリートスラブの上に、直接フローリングなどの仕上げ材を張る工法です。直床は床下の空間が少ない、もしくはコンクリートスラブに配管を埋め込んでいるケースもあるためリノベーションの際にキッチンや浴室といった水回り設備の位置変更に制限があることがあります。 また、床下に給排水管やガス管などを通したい場合は、配管する箇所のみ床を高く仕上げるなど工夫が必要です。
直床のメリット
・天井が高い
直床のデメリット
・水回りのリノベーションが難しい
・衝撃音が伝わりやすい
中古マンションをリノベーションする場合
中古マンションをリノベーションする場合、以下の点に注意が必要です。
1.管理規約による間取りやデザインに制限がないか
マンション管理規約や構造によって、間取りやデザインの制約を受けることがあります。その場合、理想の間取りやデザインを100パーセントかたちにできないため、注意が必要です。
マンションリノベーションでは、専有部分のみが工事の対象で、共用部分はリノベーションできません。また、マンションの構造上難しい工事もあります。
具体的には以下のような制限があるため、注意が必要です。
・構造上変更できない柱や壁がある
・サッシや玄関ドアは交換できない
・パイプスペースの移動ができない
上記の部分については間取りを確認し、そのままでも見た目や機能面に問題がないかを確認しましょう。
また、マンションの管理規約や構造によっては、施工内容に以下のような制約を受ける場合もあります。
・床暖房を設置できない
・床材の防音性能に基準がある
・水回り設備の移動ができない
・電気容量を追加できない
マンションごとの管理規約や構造により詳細が異なるため、事前の確認が必須です。マンションの構造が分からない場合は、まずは担当者に相談してみましょう。
2.断熱性に問題はないか
暮らしの快適性に大きく影響するため、断熱性能を確認しておきましょう。断熱性は、冷暖房の効きやすさや、結露の発生有無に直結します。
マンションは、木造の戸建て住宅と比較すると、断熱性が高い傾向にあります。
しかし、物件によってはサッシや窓ガラスの性能などにより、断熱性が低い居住空間もあるため、注意が必要です。
3.マンションの修繕積立金や管理費が高くないか
マンションの修繕積立金は、建物の共用部分の修繕に充てられる費用で、マンションの長期的な維持管理において重要な役割を果たしています。具体的には、外壁塗装、屋上防水、エントランスの改修などに使用されます。
一般的に、マンションの築年数が古くなるほど、修繕積立金の金額は高くなる傾向にあります。これは、建物の老朽化に伴い、修繕の必要性や規模が高まるためです。
マンションの大規模修繕は、通常12〜15年に一度の頻度で行われます。定期的な大規模修繕に備えるために、区分所有者は毎月一定額の修繕積立金を積み立て、マンションを所有している間は毎月支払い続ける必要があります。また、原則として、マンションを売却しても修繕積立金は返却されません。
修繕積立金がどの程度になるのか事前に確認し、資金計画に組み込んでおくようにしましょう。
4.新耐震基準を満たしているか
中古マンションを購入する際には、新耐震基準を満たしているかどうかを確認するようにしましょう。
1981年6月に建築基準法が改正されて新耐震基準が適用されるようになり、震度6〜7程度の地震であっても倒壊しないレベルの基準が設けられました。
1981年以降のマンションでは、震度6以上の地震でも倒壊しないように設計されていますが、1981年以前に建築されたマンションには旧耐震基準が適用されており、震度6以上の大地震に見舞われると倒壊するリスクがあります。
マンションリノベーションの場合、工事ができる範囲は自分たちが居住する空間だけであり、マンション全体の耐震性向上とは無関係です。1981年以前の旧耐震基準の中古マンションを購入するかどうかを検討している場合には、耐震補強工事がされているかどうかを必ず確認しておきましょう。
また、新耐震基準を満たしているマンションは、住宅ローン控除が利用できるため、費用を抑えることができます。一方、旧耐震基準で建てられたマンションでのリフォームローンでは、住宅ローン控除が適用できない場合もあり、金利も高い傾向にあるため、トータルの負担が大きくなる可能性があります。
費用を抑えるためには、新耐震基準を満たしているマンションを検討しましょう。
5.諸費用を計算しているか
中古マンションのリノベーションでは、物件購入費やリノベーション費用以外にも税金や手数料など、さまざまな費用が発生します。例えば、以下の費用です。
・不動産会社への仲介手数料
・不動産登記の費用
・登録免許税
・印紙税
・火災保険料
・住宅ローンの融資手数料
・不動産取得税
・引越し費用
ローンの有無や間取りなどによって、金額と項目は変わりますが、一般的には物件価格の10%ほどかかると考えておきましょう。
また、リノベーション工事の場合、工事代金の一部を手付金として事前に支払わなければならないことがあります。
これらの費用は現金で支払うものが大部分です。そのため、諸費用のための現金を準備しておく必要があり、注意が必要です。